可能性は具現する

突然ですが、目の前にガッチガチになって座っている片倉景綱さんがいらっしゃるんですが、私はどうすればいいのでしょうか?
答えなんて誰にも求めてないですけど、助けてって思うのは仕方ないよね、うん。
とりあえず、この状況を紐解いてみましょう。
私が起きる、喜多さんが御飯を運んでくる、綱元さんと手習いする、何故か急に輝宗様が訪問、連れてきてた小姓の景綱さんを放置して執務に戻る。
いや、連れて帰ってあげましょうよ、輝宗様。
まぁそんなこんなで、目の前に景綱さん、左手側に綱元さん、右手側に喜多さんという、義姉弟に囲まれてます、まる、と。
ガッチガチの理由は、私なのか、目を光らせてる喜多さんなのか。
綱元さんに聞いてる通り、この義姉弟の力関係は面白いくらいに喜多さんに軍配が上がるようで、傍から見てる分にはとても面白いんですが、巻き込まれると傍迷惑極まりない。


「えっと、とりあえず、お茶でもいかがですか?景綱殿」


声掛けただけなのに、面白い程ビックゥって肩が上下しましたけど、あれ?やっぱりガッチガチだったのは私の所為ですか?
仕方ないといえば、仕方ないんですけどね。
こないだもやらかしたばっかりですし、むしろ、あの場に居ましたもんね、景綱さん。


「景綱、返事くらいなさい」


喜多さんの言葉で更にビクビクしてますよ。
私は返事返ってこなくても気にしませんが、そういうことに喜多さんは敏感に反応するし、ましてや景綱さんは喜多さんの義弟にあたるわけで、教育的指導ですね、これ。
綱元さんが見て見ぬフリなのは、自分に矛先が向かないようにだろうね。


「喜多、お茶をお願いします。私と景綱殿、それから、喜多と綱元の四人分を」

「畏まりました」


とにかく、喜多さんには退室して頂きます。
でないと、景綱さんがいつまで経ってもビクビクして、話にならん。
別にそれはそれでいいんだけど、わざわざ輝宗様が置いていったわけですし、何かあるんだと思うんですけど。
取り越し苦労なら、それはそれで構いません。


「それで、何用でしょうか?」


質問にまた肩が上下する。
私を見るその目が怯えを含んでるわけでないのが、私の好奇心を掻き立ててくれちゃってるんですけど、だって、この目は怯えっていうより、嫌悪とかそういう類。
でも、城内の方々の視線とはまた違うんで、嫌悪とも違う。
私はそれが知りたいわけで。
言い難いことだったとしても、逃す気はありませんので、観念してくださいね、景綱さん。
一番聞かなくちゃならない事は別なんで、それ聞けたらいいかな、とも思いますけど。


「こちらからお聞きしても?」


コクリと頷くのを見て、少し笑う。


「景綱殿は母上をどう思われますか?」

「於東の方を、か…でございましょうか?」


あらまぁ、はじめて会った頃の綱元さんを思い出す反応を有難う。
敬語慣れしてないよね、景綱さん。
輝宗様にはなるべく無口で過ごしてるんだろう。
今では綱元さんも慣れたもんですけど、最初は結構酷かったからな。


「話し易い口調でどうぞ。景綱殿は私に仕えられているわけではないのですから」

「はぁ」

「それで、母上をどうお思いですか?」


緊張した面持ちは自分の言葉に責任を持っている証拠。


「母親としてのあの方は正直好きにはなれない。梵天丸様を突き放すあの姿を見て、そう思った」

「では、梵天丸をどう思いますか?」


期待が現実になり形作っていく。
一つ息を吐いて、真っ直ぐに見据えられた目に釘付けになる。


「今はまだ幼い。でも、強い心を持っている、と」


その言葉に安堵と共に笑んだ。
景綱さんが目を見開くのを見ながらも、頭を下げた。


「景綱殿にお願いがございます」




可能性は具現する
テーマ・ファンタジー「アルカナ」(c)ARIA
write by 99/2010/12/03
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