4話
雨が降っているわけでも、大会前なわけでもないのに、部活がミーティングになった。
コートで打ちたいのに。
そんな俺の思いもむなしく、ミーティングは進む。
「そういえば、仁王」
ミーティングが終わろうとした時に、柳先輩が仁王先輩に向けて言った言葉は不思議だった。
「転校生は親戚か何かか?」
「転校生っちゅうと、三井さくらじゃったかの」
「あぁ」
柳先輩が頷けば、なんでか丸井先輩が苦しそうな顔をした。
「彼女、戸籍上は仁王さくらというらしい」
「仁王…」
ありふれてる名前なんかじゃない。
しかも、この立海に2人もいるなんて、かなりすごいことなんじゃないかって思った。
「三井はブンちゃんのクラスじゃろ?」
「話したりしないか?」
仁王先輩の問いに、柳先輩が乗っかって、丸井先輩に視線が集まる。
視線を感じたのか、丸井先輩は居心地悪げにパチンと風船ガムを割った。
「知らねー」
そう言った丸井先輩に柳先輩の目が少しだけ開いたのは見間違いなんかじゃなくて、それが嘘なんだってすぐにわかった。
あんたを苦しめ始めたのは、
丸井先輩が嘘を吐いた時?
柳先輩がデータを集め始めた時?
それとも、
俺たちがあんたを追い抜かした時?
知らぬ街に降る雪は
Side:Akaya