2話
転校なんて初めてで、しかも転校先が私立校だったから、凄く緊張をしていた。
校門から校舎に向かって、職員室に入ったら言う挨拶を何度も繰り返しながら歩いた。
私を追い越して行く数人の男子生徒の中にふわりと銀色が輝いた気がした。
もう失ってしまったその色を見つけて、思わず“あの人”の名を呼んだ。
「まさはるくん…?」
こんな所にいる筈がない。
ましてや、相手は此処にいる限り、高校生か教師だ。
“あの人”の筈がなかった。
けれど、立ち止まった男子生徒の中に、確かに私は“あの人”を見た。
「知り合いかのぅ」
妙な方言が耳についた。
“あの人”ではない。
だって、“あの人”はとても流暢に標準語を喋る人だったから。
でも、“あの人”と似た綺麗な声。
不審そうな目で見る彼らに謝り、教えてもらった通りに職員室に向かった。
(忘れなくてはならない)
先生に呼ばれるまでの間、そればかりが頭をグルグルと回っていた。
「三井」
「はい」
呼ばれて入った先で、私は頭を下げた。
「三井さくらです。仲良くしてください」
頭を上げる。
ふと、目に入ったのは朝に出会った彼らの中にいた赤い髪の人だった。
忘れなくてはならないの。
銀に輝くあなたの存在を。
知らぬ街に降る雪は
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