40話




涙が止まった頃、ハルを従えてリビングに向かえば、電話の留守番ボタンがチカチカと点滅しているのに気付いた。

家の電話にかけてくる人は限られてくる。

個人で知っているのは、現在の私の保護者となってくれている榊さんだけだ。

あとは、立海の転入書類に書いたのと、前の学校に転居先として知らせただけ。

大事な用しかない人ばかりが知っている所為か、ボタンを押すのには、勇気が必要だった。


「誰かな?」


ハルに向かって首を傾げれば、ハルも小さくクゥンと鳴いて首を傾げた。

聞かないことには始まらない。

意を決して、点滅を続ける留守番ボタンを押した。


『さくら?』


再生された声にドキリとした。


『先生に無理を言って電話番号を聞いたんだ。まだ帰ってないの?とにかく、君に会いたいんだ。またかけるよ』


サエだ…。

優しくて仲間思いの私達のリーダー的存在だった佐伯虎次郎。


「会いたいよ、みんな…」


何も告げずに転校した。

みんなが大好きだった。

ずっと助けられてきた。

だから、告げることが辛かった。

電話から聞こえたサエの声はどこまでも優しくて、止まったはずの涙がまた流れ始める。


「会いたい、会いたいよっ」


ずっと思っていたことを口に出したら、それは止まることなく溢れ出した。

忘れられるわけがない。

いつだって優しいサエ。

気遣いの上手いいっちゃん。

何も言わずにただいつも傍に居てくれたあっちゃんに亮ちゃん。

フォローの上手な首藤。

頼りになるバネ。

ムードメーカーだったヒカルと剣太郎。

みんな、私の宝物だった。




振り返れば

彼らによって

毎日が輝いていた




知らぬ街に降る雪は
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