38話
エントランスのある1階のボタンを押すと、幸村くんは柳に視線を向けた。
「柳、家に電話して仁王の家に泊まると外泊許可を貰ってくれ」
「幸村くん?」
部活ん時みてぇな厳しい口調に俺は疑問を隠しきれなかった。
「あ、仁王に拒否権はないから」
絶対的な幸村くんの言葉と雰囲気の所為か、もとから何の為の集まりかを理解して納得してるからなのか、仁王は一つ溜息を吐いて、肩を竦めただけだった。
「俺達は?」
「外泊許可をわざわざ取る方が怪しいからいいよ」
クスリと笑んだ幸村くんに少しばかり恐怖を感じたのは内緒にしたい。
「仁王、柳生に連絡はつくかな?」
「呼ぶんか?」
「出来れば、ね」
「了解ナリ」
一度家に帰った比呂士に仁王が電話をかけはじめる。
「丸井はジャッカルに連絡」
「おう」
「真田副部長も呼ぶんスか?」
「真田は邪…いや、話がややこしくなるから呼ばないことにするよ」
明らかに邪魔だからって言おうとしたぜぃ。
ちょっと青ざめた赤也を横目に俺はジャッカルに電話をかけた。
携帯から聞こえるコール音を聞きながら、隣で同じように比呂士に電話をする仁王の話し声を聞く。
「いや、今、三井さん家出たとこじゃき」
その一言で比呂士が来ることがわかった。
と、同時に、コール音がプツリと途切れ、相手が出たことを告げる。
「もしもし?ジャッカル、今すぐ仁王ん家、集合!」
聞き返してくるジャッカルを無視して、ブチリと通話を切った。
赤也が信じらんねぇって顔して俺を見てたが、知らねぇ。
もう引き返せない
なぁ
そうだろぃ?
知らぬ街に降る雪は
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