29話




「お茶、飲むだろう?」


そう言うて入ってきた幸村が全員分のマグカップを机に置く。

問いかけの筈なんに、有無を言わせんとこが幸村らしか。

そん後ろで赤也がどこか落ち着きなく俯いとった。


「どうしたんじゃ?赤也は」


問い掛けたら、バッと勢いよく顔を上げた赤也だったが、俺と目があった瞬間に気まずそうに目を逸らした。


「なんでもないッス…」


なんでもないと言いながら、その表情はそうは見えん。

まぁ、仕方ないか。と、溜息を一つして、訊かんことにしてやった。


「三井さん、遅いね」


部屋の置き時計を見て、幸村が呟いた。

それを聞いて、も一つ溜息を零して、ポケットに突っ込んどった携帯をカチカチと弄る。

視界ん端でブン太がソワソワしとるんが見てとれた。

送信したメールの返信は律儀なアイツらしゅう早かった。

本文に目を走らせると、自然と眉間に皺が寄った。


「仁王、柳生はなんて?」


俺が何をしとったかなんて、幸村にはお見通しらしい。


「15分ほど前にエントランスんトコで別れたやと」

「15分!?」

「ちょっとかかりすぎているな」


驚いた声を上げたのは赤也で、それに反応するように言葉を発したんは参謀じゃった。


「俺っ」


そう言うて、ブン太が立ち上がる。


「エントランス見てくる」

「全員で移動するわけにはいかないし、赤也、ブン太と行ってくれるね?」

「はい!」


元気よう返事した赤也がブン太と玄関に向かうた。

スッと参謀が立ち上がり、その2人を追うように部屋を出た。


「ストッパー、頼んだよ」

「あぁ」


赤也、ブン太、お前さんら、幸村に信用されてないぜよ。

背筋の伸びた参謀の背中を見て、また一つ溜息を吐きそうになった。





気にならないなんて

嘘でしかなく

ただただ

興味の範囲だと

言い聞かせるしかなかった




知らぬ街に降る雪は
Side:Masaharu




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