28話




「三井さんが帰ってくるまでにお茶を淹れさせてもらおう」

「はい」


赤也を連れて俺はキッチンにいた。

この手のマンションは構造が似ているから、キッチンの場所もすぐにわかって助かる。


「幸村部長…」

「なに?」


IHの上に置かれたままのケトルに水を入れて、火にかけた。


「これ」


じっと動かない赤也を不審にも感じていたが、これと赤也が指差す先を見るために近付いた。


「仁王先輩じゃないんスよね?」


赤也が指差す先にあったのはセーラー服に身を包んだ今より少し幼い三井さんと白のタイトシャツに黒のジャケットを羽織った仁王が仲良さげに写っている写真だった。


「これが彼女の言う“仁王 雅治”なんだろうね」

「俺らって、三井先輩を苦しめてるだけなんじゃないんスか?」


赤也の質問には答えられなかった。

そうだと肯定することも、違うと否定することも、俺にはどちらも出来はしなかった。





君の苦しみは君にしかわからない

それは言い訳でしかなかったんだ




知らぬ街に降る雪は
Side:Seiichi




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