27話
幸村くんが赤也を連れていなくなった部屋は、やっぱり居心地が悪かった。
多分、赤也は俺以上に居心地が悪かったんだろうな。
「丸井」
「なんだよぃ」
柳に呼ばれてそっちを向けば、視界の端で仁王も柳の方を向いたのが見えた。
「あの時、何故嘘を言った」
あの時。
部室で柳が仁王に三井は親戚かって訊いた時。
「三井が笑うから」
「笑う?」
「あいつに仁王の話したら、泣きそうな顔して笑うから、テニス部と接触させたくなかった」
柳にかなわないのなんてわかりきってるから、正直に話した。
ただ、視界の端にいる仁王の反応が怖かった。
「彼女は優しい人間だな」
柳が少し苦笑いを浮かべる。
「優しすぎんだ、あいつは」
優しすぎるから
君は傷つきすぎたんだ
知らぬ街に降る雪は
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