26話
三井先輩のいなくなった部屋で俺は居心地悪く身じろいだ。
当たり前だ。
幸村部長はなんか考えてるみてぇで、柳先輩はいつも以上に無口だし、丸井先輩はガムも噛まずにたださっきまで三井先輩がいた場所を見つめてる。
一番変なのは仁王先輩だ。
さっきから一カ所を見つめたまま動かない。
いつもならニヤニヤ嫌な笑みを浮かべてる口元も今は一文字に結ばれたまま。
唯一わかるのは、全員が三井先輩の話してくれた“雅治くん”を気にしてるってことだけ。
「赤也」
不意に幸村部長に呼ばれて背を伸ばす。
もう条件反射だ。
俺、あれみてぇじゃん。
あれ、そうそう、パブロフの犬。
「ちょっとついてきて」
俺に拒否権なんてない。
幸村部長が俺達立海大テニス部の“絶対”だから。
アンタの“絶対”は
やっぱり
あの人だったんだろうか
知らぬ街に降る雪は
Side:Akaya