19話




真田の裏拳で慣れてるとはいえ、無我夢中に暴れて叩かれた頬はヒリヒリ痛んだ。

でも、それ以上に胸が痛かった。

気付いた奴がいんのか知らねーけど、玄関とこの和室に置かれた写真立てが原因だ。

柳とか幸村くんは気付いてるだろうけど。

写ってたのは、幼さを残した三井と三井に似た女、それから、銀髪の男。

多分、あの銀髪の男が三井の言う“まさはるくん”だ。

マジで仁王にそっくりだった。

気持ち悪ぃくれぇに。


「先に謝るわ」

「え?」

「ごめんなさい」


俺らが不思議そうにする中、三井は頭を下げた。


「きっと、嫌な想いをするから。特に、」


三井は一旦言葉を区切って、絶対にそっちには向けなかった視線を仁王に向けた。


「仁王君、あなたが一番嫌な想いをすると思う」


三井が浮かべた苦笑にも似た微笑みは、今まで見てきた悲しそうな表情の中で一番悲しそうに見えた。





嫌な想いをするのは

俺らより

お前だったんじゃないか?

それは今更な質問



知らぬ街に降る雪は
Side:Bunta




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