17話
人数分のコップとお茶とオレンジジュースのペットボトルを持ち、彼らを案内した和室に向かう。
人数分の椅子を用意するのは大変だから、唯一、和室のその部屋に案内したのは、果たして正解だったんだろうか。
あの部屋には、写真立てがあったような気がする…。
気がするというのも可笑しい。
置いたのは、紛れもない私自身なのだから。
「お待たせしました」
襖を開けて、入る。
彼らはそれぞれ“らしく”座っていた。
「お茶とオレンジジュースでよかったかな?」
「気を遣ってもらって、すまない」
幸村君が苦笑を浮かべる。
ここに来るまでに一通りの自己紹介はしてもらった。
一見女の人みたいな不思議な立海テニス部部長の幸村君。
帽子を被った先生みたいな人が立海テニス部副部長の真田君。
唯一の外人さんが桑原君。
うねった黒髪の子が2年の切原君。
「三井」
「はい?」
「お前、1人暮らし?」
そう問いかけたのは、ずっと沈黙を保っていた丸井君だった。
「そうだよ。でも、1人じゃない…かな?」
「は?」
不可解そうな顔をする丸井君の声と共に、私の後ろからカリカリという音が聞こえた。
少し襖が開いて、ワフと犬のらしくない鳴き声が和室に響いた。
「ハル、入ってきちゃ駄目って言ったでしょ?」
「ハル?」
「私の同居人のハルくん」
ハルを抱き上げて、クスリと笑えば、彼らも微笑んだ。
ハルも
私も
ご主人様をなくした
迷子なの…。
知らぬ街に降る雪は
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