12話
部活の終了時間になっても、丸井先輩は現れなかった。
それに真田副部長は怒っていたけど、俺は心配だった。
「とうとう来ませんでしたね」
着替え終わった柳生先輩が丸井先輩のロッカーに目線を合わせてそう言う。
「そうじゃな」
「まだ保健室にいるかもしれないから、帰りに寄ってみようか」
幸村部長の提案に俺はパッと顔を上げる。
「あ、俺も行きたいッス」
手を挙げて、主張。
そんな俺に苦笑したのは、幸村部長だけじゃなかった。
「そうだな」
「三井さんも気になりますし」
「じゃ、行こうか」
パタンパタンとロッカーを閉める音が重なる。
まだネクタイを締めてない俺は、とりあえずネクタイを首にかけ、ジャージを鞄に押し込めて、ロッカーを閉めた。
どうして
人の痛みは
目に見えないんだろうか
知らぬ街に降る雪は
Side:Akaya