11話
倒れた三井はもうすぐ放課後だってのに、目を覚まさない。
このまま起きなかったら、なんて、最悪な考えがよぎる。
「起きろよぃ」
自分の声がこんなに弱くなるなんて思ってもみなかった。
いつだって、自信があった。
なのに、今の俺には自信なんて一個もなくて、ただ早く三井に起きて欲しかった。
「…………く…」
寝ている三井が何かを呟く。
「なんだ?」
苦しそうな三井の顔に今すぐ起こしたい衝動にかられた。
「待って、まさはるくん!!」
ツキリと、胸が痛くなった。
三井の知る、仁王じゃない、仁王。
「起きろよぃ、…さくら」
はじめて呼んだ名前は、静かな保健室に消えた。
悲しませたくない
泣かせなくない
苦しませたくない
でも
君が知りたい
知らぬ街に降る雪は
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