「コンッ」
逃げていた私は必死で物影に隠れていた。
突然聞こえた何かの鳴き声を模した人間の声に振り向けば、壁が途切れた角から腕が出ていて、その指は狐を模していた。
「生きたい?生きる勇気が貴女にはある?」
死にたいなんて思っていた訳じゃなかった。
だって、生きたかったから逃げたのに。
そう思って、顔を上げた先に彼女はいた。
明らかに私よりは年下で、でもどこか大人びた彼女は真っ黒なワンピースを身に纏っていて、指はまだ狐を作ったままだった。
「これから先はずっと絶望ばかりかもしれない。それでも、貴女は生きるの?」
「生きる。生きたい」
そう言うと、彼女は満面の笑みで笑った。
「わかった。じゃあ生きてね、ニコ・ロビン」
背を押されたと思ったら、どこかの中で、振り向いても、もう彼女は居なかった。
その中で人の気配が消えるのを待った。
人が居なくなって、街が消えた。
それでも、私は生きていた。
不思議な狐少女に生かされた。
狐に消された少女また会えると信じているwrite by 99/2011/10/07