父親が死んで一年。
まだ父親が遺した生活資金はあるものの、そろそろ、自分で稼ぐ術を開拓しなければと思い始めた頃だった。
医者であった父が死んでから鳴ることのなかった来訪者を知らせるベルが鳴った。
「どちら様ですか?」
「こりゃあ驚いたぜ。嬢ちゃん、ドクターは何処だ?」
そこに居たのは、海賊王、ゴール・D・ロジャー。
私の知識だけの人物であり、実際に会うことなど有り得ない筈だった男。
私は彼を見上げた。
「現在、この家には私以外に医者は居ません。先代である父は一年前に亡くなりました」
淡々と私は言う。
父親が愛用していた私には大き過ぎる白衣を羽織った私は、滑稽でしかないだろう。
それでも、医者だと言うのは、私のプライドだった。
「そぉか。あいつは死んじまったか。そぉか」
淋しそうだと思った。
彼が父とどういう知り合いだとかは知らないし、むしろ知り合いだということさえも知らなかった。
それでも、彼は父の死を悲しんでいる。
悼んでいる。
「あなたは父の知り合いですか?」
「俺かぁ?あいつぁ、俺の船に乗っててなぁ。船医ってやつさ。まぁ6年ほど前に船を降りたんだけどな」
我が父よ、あんた何やってんだ。
つまり、父は6年前まで海賊王の船で船医をやっていた、と。
海賊王の船の船医ってクロッカスって人でしたよね?あれ?
「嬢ちゃん、おめぇ名前は?」
「ニカ。あなたは?」
「ゴール・D・ロジャーだ。宜しくな。リトルドクター」
リトルドクター。
これが、この世界に生まれて、はじめて私を医者とそう称した男、ゴール・D・ロジャーと私のファーストコンタクトであり、ラストコンタクトだった。
Little doctor私をそう呼んだ彼は、
それから一週間後に処刑を選んだwrite by 99/2011/10/07