01
私は確かに"終わり"を見た筈なのになぁ。
傷だらけで、でも、ある意味で綺麗な掌を見てから、空を見上げた。
空は今にも雨が降り出しそうな程に暗い。


「虚戯千闇か」


匂宮千闇は死んだ。
あの日、確かに私は死んだのだ。
だけど、私は再び生まれた。
虚戯千闇として。
匂宮千闇が友と呼び愛した裏世界の誰とも出会いはない。
裏世界自体があるのかすら、今の私には確認出来ない。


「会いたいなぁ…」


私の呟いた声など誰にも拾われなかった。
それもその筈だ。
私の周りには誰もいない。
虚戯千闇の17年の人生は壮絶で残酷で悲惨だった。
人生の転落開始は私が5歳の時だ。
両親の離婚、そして引き取ってくれた母の再婚。
それだけならば、よくある話だ。
母の再婚相手が幼女趣味で私に度々悪戯を働いた。
その事実を知った母は私を子供部屋に閉じ込め、再婚相手と無理心中した。
警察により保護された私は再婚もせず仕事に生きていた実父に引き取られた。
父は母の面影を宿す私に腹を立て殴る蹴るの暴行を繰り返したし、顔を合わせることが少なくなった今現在もそれは続いている。
そして、数ヶ月前より私は学校での立場さえ悪くなった。
一人暮らしをする為に引っ越してきた私は転校という形で新しい学校に通っていた。
最初こそ、友達と呼ぶに相応しいだろう仲間が出来ていたけれど、ある日突然その友人の一人が私に罵られ叩かれたと言い出した。
匂宮千闇であった私が体験したよりも低俗で弱い暴力ではあったけれど、確かに私は制裁として虐められはじめたのだ。
身に覚えもない原因の制裁を。
その延長線上で、数日前から男子生徒による性暴力も始まった。
表世界の暴力は確かに弱くて笑ってしまいそうなものだったけれど、私が精神的に参っているのは確かだ。
いくら母の再婚相手の悪戯で既に処女でなかったとしても、好きでもない相手に乱暴に抱かれ傷付かない訳がなかった。
今の私には出夢も理澄も居ない。
あの頃のように、信じてくれる人も陰で手当てをして支えてくれる人も居なかった。


「出夢、理澄、時刻くん、いっくん、友ちゃん、潤さん、狐さん、園樹ちゃん、皆に会いたいよ」


弱くなった。
力だとかそんなものじゃなくて、心が、精神が弱くなった。
危ないとは解りつつも、そのまま座っていた公園のベンチに横になった。
夢の中で彼らに会えることを祈って、気を失うように目を閉じた。



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