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匂宮を捨てていて良かったなんて思ったのははじめてだった。
いつだって、匂宮に縛られていて結局私は匂宮千闇でしかなくて、それ以外の私には存在価値がないくらいに思っていたから、匂宮と決別した時は哀しかったし、生きた心地がしなかった。
それでも、今はそれが救いだ。
零崎に仇なす者は一族郎党老若男女問わず皆殺し。
裏世界に関わる者なら誰だって知っている零崎一賊の掟。
私が出夢と理澄を傷付けたって思ってるから、二人は匂宮だけど皆殺し対象から除外されたし、決別してしまっている匂宮にもそれ程被害はない。
寧ろ人識くんが居るから積極的に守られていると言ったっていい。
私を信じてくれた人は決して多くなかったけど、私を憎んで恨んで傷付けてくる人は沢山いるけれど、やっぱり私は裏世界の皆が嫌いになれない。
そりゃぁ敵対することもあったけど、そんなことは今になってみれば些細なこと。
なんて過去を思い出すのはあまり宜しくないのかもしれない。
姫ちゃんの曲弦糸で動きを封じられて、人識くんのナイフが身体のあちこちに刺さる。
血が足りなくなっているんだろう、薄らぐ意識の中、軋識さんが愚神礼賛[シームレスバイアス]を振りかぶるのが見えた。
愚神礼賛の恐ろしさはよくよく知ってる。
あぁ死ぬんだね、私は。
匂宮の最高傑作、殺戮人形[キリングマリオネット]もここで終わりか。


「…いひっ………」


振り下ろされる愚神礼賛に目を閉じた。


「…………愛してるよ、×××」


出夢と理澄の笑顔、最期に見たかったのになぁ。なんて、戯言だね。






「千闇千闇千闇千闇千闇千闇千闇千闇千闇千闇千闇千闇千闇千闇千闇千闇千闇千闇千闇千闇千闇千闇千闇千闇千闇千闇千闇千闇千闇千闇千闇千闇千闇千闇千闇千闇千闇千闇千闇千闇千闇千闇千闇千闇千闇千闇千闇千闇千闇千闇」


狂ったように泣き叫んだのは人喰い[マンイーター]で、静かに涙を流したのは人喰い[カーニバル]
最悪は虚しさに歪めたその顔を狐面の下に隠し、追放された時刻は目隠しの下で憤りを抑え込んだ。
最強はやり場のない怒りを地面にぶつけ、楽しか知らぬ筈のサヴァンはその目に哀を映し、戯言遣いは目を伏せた。
彼らの目の前で、万物親愛[ラヴァーラヴァー]だった女はその生を閉幕した。





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