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俺の通う並盛高校に2年になってすぐの5月に転校してきた虚戯千闇は酷い人間だった。
いや、同じ人間というカテゴリーに入れたくないくらいに嫌なやつだ。
俺の従姉である愛を虐めてた。
虚戯の話は聞いていた。
愛が酷く嬉しそうに親友が出来たんだと言っていたから。
そんな愛を裏切って虐めていた虚戯を俺は許さないし、許すわけがない。
そりゃ一番最初の時点、愛を頬を殴った時に素直に謝って二度としないと誓ってくれていたら、俺達だってここまで酷いこともしなかっただろう。
なのに、虚戯はその唯一のチャンスを逃したんだ。
私は何もしていない。の一点張り。
殴られようが何をされようが表情一つ変えない気持ち悪いやつ。
非力で守ってやらなくちゃいけない愛の為に、俺達は虚戯を傷付ける。


「理澄」


屋上の雲雀さんの定位置で眠っていたら、虚戯の声が聞こえた。
嫌なやつに遭遇した。
虚戯が名前を呼んだのは、今朝教育実習生だと数学担任の先生が紹介していた人だ。
名前は確か匂宮理澄。


「どうしたんだね、千闇」

「理澄、理澄は誰の指示で並盛に来たの?偶然だなんて私は信じないよ。理澄が教育実習なんて有り得ないじゃない。いくら出夢じゃない理澄でも、裏世界の匂宮が学校だなんて」

「あたし達が千闇の為に何かしたいと思うのは当然なんだね。だって、千闇はあたし達を守ってくれた。だから、あたし達はまた何も出来ないままなんて嫌なんだね」

「あたし達っていうのはさ、狐さん達だよね?」


そっと聞き耳をたてて聞いた話は一言で言うと意味がわからなかった。
出夢って人の名前だよな?
裏世界?
裏世界ってなんだ?
裏社会とは違うのか?
匂宮って理澄先生の苗字だろ。
何なんだ?
狐って。
虚戯千闇は一般人じゃないのか?


「千闇、狐さんは今度こそ千闇を守りたいんだね。それはあたしも兄貴も一緒だし、友ちゃんも戯言遣いのおにーさんも人類最強もみんな一緒なんだね。だから、忘れないで欲しいんだね。虚戯千闇が裏世界に何の関係もない一般人でも、あたし達裏世界の人間には"千闇"が必要なんだね」


俺の中に流れるブラッド・オブ・ボンゴレが警鐘を鳴らす。
危険だ。
これ以上は踏み込んじゃ駄目だ。
今までそう思わなかったことが不思議な程に、今の俺には感じていた。
虚戯千闇は危険だ。
排除することも廃除することも危険な程に、危険な存在。
どうして今まで俺達は無事だったんだ?
そんなの決まってるじゃないか。
虚戯千闇が手加減していた。
相手にしていなかった。
相手にされてなかったのは俺達。
今の俺は虚戯千闇への恐怖で周りが見えていなかった。
そう、ちらりと俺の隠れていた貯水槽の上を一瞥した虚戯千闇と匂宮理澄先生の存在を。
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