12
昨日は結局夜中まで騒いでそのまま眠ってしまった。
リビングで寝てしまった筈なのに、気付いたら、自分のベッドの中で、誰かが運んでくれたみたいだった。
欠伸を噛み殺して、久しぶりに授業に出席していた。


「突然だが、今日からこのクラスに教育実習生が入ることになった。担当は情報Aになるが、情報Aは知っての通り、数学担当の私が教えているから、必然的にこのクラスも担当だ。仲良くしろよ」


こんなクラスに教育実習生だなんて、可哀相に。
私は珍しく心の底からその教育実習生に同情していた。
正直、こんな学校でこんなクラスじゃ教育実習どころじゃないだろう。
無事に教員になられることを祈っておこう。
まぁ私には全くもって砂粒一粒程さえも関係のない話なんだけれど。
なんて、私が考えている間に担任はその教育実習生を呼んだようだった。
顔を上げて、教育実習生を視界に入れた瞬間、私の時は止まった気がした。


「教育実習生の匂宮理澄なんだね!みんなといろいろ仲良くしていきたいんだね」


聞いてない。
私、そんな話聞いてないよ。
にぱっと笑う理澄にクラスメイト達が可愛いと漏らしたのを私は聞き逃さなかった。
そんなことは当たり前だ。
理澄は可愛い。
出夢も可愛かったけど、あの子は昔からその中にも格好良いところがあった。
今は完全に男の子だから格好良いしかないけど。


「千闇はこのクラスだったんだね!」


笑顔のまま、私に向かってきた理澄に、クラスメイト達がザワザワと五月蝿かった。


「理澄…ちゃん」


流石に今の私が理澄を呼び捨てにするのはマズイかと思って敬称をつけてみた。
ら、理澄の表情が不機嫌そうになる。


「いつも通りでいいんだね。でも、あたしが千闇って呼ぶと兄貴になったみたいなんだね」


そうだ。
私を千闇と呼び捨てで呼ぶのは出夢で、理澄は千闇ねーさんと呼んでいた。
やっぱり年下をねーさんと呼ぶのは変だし、出夢のように呼び捨てなんだろう。


「理澄が教育実習なんて聞いてなかったからビックリした」

「なら成功なんだね。隠して驚かせたかったんだね」

「そっか。でも学校で理澄に会えたのは嬉しいよ」

「あたしもっ!あたしもこれから毎日千闇に会えると思うとずっごく嬉しいんだね」


ニコニコと笑う理澄にあえて何も言わなかった。
きっと理澄は気付いている。
調査は理澄の十八番だから、気付いているというよりも"知っている"が正解。
裏世界に手出しさせては、零崎じゃなくとも、この街は全滅する。
私は自分を過小評価する程、馬鹿じゃない。
理澄と出夢にとって、私が、匂宮千闇であった虚戯千闇が、この街を全滅させる程の価値があると知っている。
だからこそ、ここで何かを言う訳にはいかない。
一限の為に教室を出た理澄を追って、クラスメイトには聞こえないように昼休みの屋上へ呼び出した。
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -