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時系列は少しばかり遡る。
虚戯千闇がまだ学校の裏庭にて、同級生から殴る蹴るの暴行を甘んじて受けていた頃と同時刻。
玖渚友の指示の下、虚戯千闇とその父親の戸籍上にて繋がっていた縁が切られ、当人の与り知らぬところで虚戯千闇が西東千闇となっていた訳であるのだが、それは今は関係ない。
ここで重要となる人物は、虚戯千闇でもその父親でも、新しく戸籍上で千闇の家族となった人間でもなく、自称最強の殺し屋だ。
裏世界に通じる者ならば、最強といえば"人類最強の請負人"哀川潤であり、殺し屋といえば殺し名"匂宮"の領域だと言うだろう。
しかし、自称最強の殺し屋は所詮裏社会の人間だった。
自称最強の殺し屋であり、由緒あるマフィア、ボンゴレ十代目の家庭教師であるアルコバレーノ、リボーン。
裏世界の人間に言わせれば、マフィアに由緒も何もあったものじゃないだろうが、それはここで特筆すべきではないだろう。


「まずいぞ」


そう、彼は焦っていた。
小さな町で殺人事件を隠蔽するなど簡単なことだろう。
並盛はさほど大きな町ではない。
しかしながら、並盛でそれは有り得てはならないのだ。
ボンゴレの関係者が情報を持ち、ボンゴレ十代目ファミリー雲の守護者でもある雲雀恭弥が恐怖で統治する並盛で、殺人事件の隠蔽など出来る筈がなかった。
リボーンでさえ、虫による情報がなければ気付かなかっただろう。
昨日、並盛に幾つかある公園の一つで行われた殺人事件は、リボーンにとって焦りを生むものでしかなかった。
殺人を犯した人間がリボーン自身のような裏社会の人間ならば、リボーンとてこんなに焦りはしなかった。
いや、確かにこの事実を隠蔽してしまえる組織(だろう)にも焦りはあるのだが、リボーンが一番に恐怖を感じ焦りを感じたのが、人を殺した虚戯千闇に対してだった。
極々普通の、というには悲劇に溢れた人生を送っていたようだが、並盛高校に転校してきた一女生徒でしかなかった筈の少女が、人を殺して、その後に行方を晦ます訳でもなく、いつも通りに登校してきていたなど、恐怖そのものだった。
その少女が虚戯千闇でなければ、リボーンとてそこまでの恐怖を抱かなかっただろう。
だが、どれだけたとえばの話をしても、少女が虚戯千闇だという事実は変わらない。


「やべぇぞ。このままじゃツナ達が危ねぇ」


リボーンは知っていた。
自分の教え子とそのファミリーがしていることも、その起因となった出来事が教え子の従姉である愛の虚言であることも、今も尚、その虚言が続いていることも。
彼は全て知っていた。
知っていて、彼は態と放置したのだ。
教え子にはいい勉強になるだろうという理由だけで、一人の女生徒を犠牲にすることを選んだ。
それがボンゴレの将来、いや存続さえをも左右する選択だとは知らずに。
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