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一人暮らしをしているマンションは高校生一人が住むにしては高く大きいものだった。
それこそ、私自身はその昔いっくんが住んでいたようなアパートでも構いはしなかったのだけれど、父親の見栄の為にこんなマンションに住むことになった。
セキュリティーがきちんとしている所は好感が持てる。
ただそれだけだったのに。


「なんで?」


見上げたマンションはちらほらと明かりが点いていた。
もう暗くなってきているわけだから当然だろう。
そのちらほらの中に、私の部屋が含まれていなければ、違和感など持ちはしなかった。


「朝は消した。じゃあ"オトウサン"が来てるのかな?」


ふらりとやって来ては部屋の物を壊して、私でストレスの発散をして帰っていく父親。
今、海外出張中だった筈なのに、もう帰ってきたのだろうか。


「殺しちゃまずいよね」


溜息と共に吐き出した言葉に何の罪悪感も抱かない。
零崎のように呼吸をするようにというわけではない。
どちらかと言えば、私は出夢の殺戮中毒に近い性質だった。
出夢の様に拘束着を着て殺戮時間を設定しなければならない程ではなかったけれど。
でも、幼い頃から殺すことを当たり前としてきた匂宮千闇には人を殺すことに対する罪悪感など有りはしない。
確かに標的を殺す時、遺された人間が可哀相だなぁと思うことはあったけれど、それは罪悪感ではなく単なる同情だ。


「ただいま」

「おっかえりー」


聞こえてきたのは父親の怒鳴り声なんかじゃなくて、明るい、昨日聞いたばかりの出夢の声だった。


「え?なんで?出夢?」

「ぎゃははははは。おっせぇーの。ほら千闇」

「えっあ?うわっ」


玄関で突っ立ったままだった私を出夢が引っ張って、リビングに連れていかれる。
リビングのソファーに座っていた人物に私はまた驚かせられた。


「おかえりーちやたん」

「おかえりなさいなんだね」

「潤さんに理澄まで」


不法侵入だろうけど、この3人、いや裏世界の人間にかかれば、法律や刑法なんて、そんなもの既に宇宙の彼方だ。


「いやな、玖渚ちんがちやたんが一人暮らししてるって言うじゃねぇか。ここはアタシらが会いに行かなきゃな!と思ってよ」


相変わらず無茶苦茶だなぁ潤さんは。
でも、心遣いが嬉しかった。
ソファーに座ってた理澄に向かってダイブする。


「大好き、みんな」


出夢達の顔を見た瞬間から身体の痛みなんて忘れていた。
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