07
目を覚ましたら、知らない場所にいて、驚いた。
連れ去られたのかなぁと思ったけど、アイツらみたいな下衆の気配はしないし、見たかった夢は見れなかったれど、夢も見ずにぐっすりと眠れたのは久しぶりだったから、気分は少し良かった。
それだけでも上々だったのに、私を呼んだ声に視線を向ければ、望んで望んでずっとずっと会いたかった出夢が居て、出夢だけじゃなくて私を信じてくれたあの人達が居て、起きたと思っていたのに、私はまだ夢の中にいるのかと思った。
だって、こんなの、夢でも幸せになれるのに、現実なら私は虚戯千闇としての一生分の幸せをもう使い切ってしまったんじゃないかって。
信じられなくて、ただただ出夢の手を掴んだまま、彼らを見渡す事しか出来なかった。
触れた瞬間、夢から覚めて、私はまたあの地獄のような現実に戻ってしまうんじゃないかと、怖かった。
出夢だけなら、夢から覚めてしまっても、いつもの様に今日は良い夢を見れたって、まだ頑張れるって、そう思えたけれど、こんなにも会いたかった人達に囲まれている今が夢だったら、私はきっと立ち直れない。


「ちやちゃん、夢なんかにさせないよ」

「《夢なんかにさせないよ》ふん、当たり前だ。なんなら、俺の所に来い」

「って狐さん、それはちょっと。やっと千闇さんを見つけたんですし」

「もうお前の為に操想術を使うのは御免だ」

「千闇ちゃんの、ちちち治療は、わわわわ私がするからねっ」

「アタシがどんだけ捜したと思ってんだ、バカ」


皆の声が聞こえて、私は涙を堪えるのに必死だった。
涙なんて、長い間流してなかったのに。


「千闇、泣けよ。千闇が僕達の傍に居てくれたみたいに、今度は僕が傍に居るから」


出夢の言葉に堪えていた涙が流れた。
涙を流した瞬間、出夢が手加減して抱き寄せてくれて、私は泣いた。
出夢の男の子らしく少し骨っぽい肩に顔を埋めると、昔、私がしていた様に出夢が背を撫でてくれて、私の方が年下なのに、子供が成長するのは早いなぁなんて思った。
そんなにいつまでも涙が出るわけでもなく、泣き止んだ頃、勢い良く病室(…だと思う)の扉が開いて、入ってきた人物に私はまた目を疑った。


「理澄!?」

「っ千闇ねーさん?私がわかるんだね?」

「わかるよ。理澄」


出夢に抱き寄せられたまま、理澄に笑いかければ、理澄は入口からベッドまで一直線に走って、私達にダイブした。


「ずっと会いたかったんだね!もうっもうっ離れたくないんだね」


涙を堪えるように抱き着いてそう言う理澄の背中に、痛む身体を無視して、腕を回した。
出夢に抱きしめられて、更に理澄抱き着かれて、二人に腕を回して、まるで匂宮千闇が幸せだったあの頃に戻れたような錯覚を起こす。
確かに私は虚戯千闇の人生の中で一番幸せだと感じていた。
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