04
絵本園樹はドクターである。
西東天は人類最悪の遊び人である。
哀川潤は人類最強である。
玖渚友は死線の蒼[デッドブルー]である。
××××は戯言遣いである。
匂宮千闇は万物親愛であった。
匂宮千闇は殺戮人形であった。
では、この少女は、虚戯千闇は何なのだろうか。
彼女には何もない。
裏世界に組み込まれていない彼女に通り名などない。


「ひひひひ酷いよ」


処置が終わり出て来た園樹を待っていたのは、10人もの裏世界の人間だった。
園樹は少女を連れてきた潤に少女の容態を報告する。
少女の状態は決して良いものではなかった。
彼女が受けてきたであろう暴力も暴行も、裏世界の人間であれば何ともないだろう弱い力ではあるものの、少女の身体は確かに限界を訴えていた。


「ところで本当に千闇さんなんですか?」


皆が聞きたかった質問をしたのは、戯言遣いだった。
それに潤は一度目を伏せてから、目を開けるとその場にいた全員を見渡した。
絵本園樹、西東天、いーちゃん、玖渚友、時宮時刻、匂宮出夢、匂宮理澄、この場に姿さえ現さないが確実に居るらしい闇口濡衣という匂宮千闇の味方だった者の他、出夢に聞いて着いてきた零崎人識、友の足として今日の運転手を勤めた式岸軋騎こと零崎軋識。


「アタシの勘はアイツだって言ってんだ」


勘だと言い切った潤に、少女を直接見た園樹は心の中で同意する。
年齢こそ違うが、少女は確かに匂宮千闇に似ていた。
藍色がかった黒髪は彼女の色だった。
24年という時間しか生きる事の出来なかった殺し屋の色だった。


「理澄」

「わかってるんだね、兄貴」


不意に声を出したのは匂宮兄妹だった。
今にも泣きそうな顔をした理澄は調査[フィールドワーク]に向かう。
兄妹は解っていた。
自分達がすべきことを理解していた。
調べ物は理澄の得意分野だ。
少女が本当に匂宮千闇であるか知るにはそれが一番だと判断した。


「出夢くん」

「戯言遣いのおにーさん。僕らはさ、ずっと一緒だったんだ。千闇はずっとずっと僕らを守って、死んだんだ。ホントは千闇に会う資格なんかないんだよ」


あの頃の心と身体がバランスが崩れそうで強さに固執するしか出来なかった出夢は居ない。
生まれ変わった世界で肉体的にも男だったからなのか、出夢は精神的な弱さを認められるようになった。
それは間違いなく成長だった。


「ちやたんはさ、大丈夫だろ」


何の確証もない潤のその言葉に出夢は泣き笑いのように顔を歪めた。
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