1 帰国



空港のアナウンスが鳴り響く中、少女はボストンバック一つを手に、日本に降り立った。
身長は高めでスラリとした身体をした少女はその身に真っ黒なワンピースを纏っていた。
その容姿は実に日本人らしい。
身長こそ一般的な女性にしては高めであるが、少女の細い身体のラインに沿うように黒い髪は長く、サラリとその背を流れている。


「久しぶり。…なんて、嫌味かしら?」


少女が呟いた言葉は誰に拾われることもなく、雑踏に消えてゆく。
彼女はその雑踏の中、足を止める。
迷惑げに眉を寄せ少女を避ける人々は、少女の容姿に目を見開き過ぎ去っていった。
日本人らしいその容姿に、意思強く光るのは深海のような碧の瞳。
それは通りすがりにも目に付くものだった。
空港を出て、少女が見上げた空は今にも雨が零れ落ちてきそうな程に暗かった。
タクシーに乗り込んだ少女はニコリともせずに、


「ここに」


と、運転手にメモを渡し、目を閉じた。


「待っていなさい」


呟きに運転手がバックミラー越しにチラリと少女を見やるが、目を開けた少女は雨の降り始めた窓の外を見つめていた。
暗さを増した空はただただ涙を流すように雨を降らせていた。





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