2 少女の仮面



学校中が2年8組に入った転校生の話題で持ちきりだった。
それは、必ずしもいいものばかりではなかったが、どの噂にも必ず彼女への庇護欲を覚えるものばかりだった。
噂が噂を呼び、転校生柄塚己緒を一目見ようと8組には人が殺到していた。
しかし、第一印象というものは凄く、クラスメイト(主に女子)が、彼女を守る為に彼女を囲み晒されるような視線から守っていた。
その為、余計に人が増えたのは致し方ないことである。


「大丈夫だからね!己緒ちゃん」


クラスメイトが己緒に優しくそう言うと、己緒は儚げにはにかんだ。
その笑顔が更に彼女達の守らなければという思いを駆り立てる。


「己緒、大丈夫だ。私達が絶対に守るから」


そう言ったのはクラスの女子のリーダー格に位置する少女だった。
背が高く、ショートカットにした髪の所為か少しばかり華奢な少年と言っても通りそうな容姿をした彼女はバレー部のエースであり、己緒を可愛がる一人である。
名前は山本 雪という。
雪が己緒を可愛がる理由を己緒は知っていた。
彼女、雪は、柄塚ゆめの友人の一人だ。


「守るとか大袈裟に言ったら、己緒ちゃんが怖がるでしょ?雪」


非難にも聞こえるが、口調は友人らしくからかいを含んだ声音で口を挟んだのは、高辻 あきだ。
色素を抜いた茶髪を三つ編みにしている彼女は大人しい外見をしてはいるが、なかなかの曲者である。
雪と同様にクラスではリーダーシップを取るタイプの人間であり、クラス委員をしていることからクラスの信頼は厚い。
だが、一度でも敵と判断されれば、口を開く度に毒を含んだ言葉ばかりを吐き出す。
敵と判断されることなどないだろうが、怒らせないことが一番だと、転校初日に雪が忠告を入れてくれたのは己緒の記憶に新しい。


「己緒ちゃん、部活決まりそう?今からじゃ委員会は入れないし、ウチの学校って部活か委員会のどっちかに入らなきゃだから」

「わ、たしは…」

「今から混じっても大丈夫な部か。文化系が妥当だな」

「己緒ちゃん、何部がいい?」


優しく問われて、己緒は俯く。
それが柄塚己緒のキャラクターだからだ。
日本語に不慣れで自分の意見は上手く言えず、極度の人見知り。
帰国するまでに何かあったのか、たまに人を怖がる仕草を見せる。
そんなキャラクターだ。





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