20 詐欺師、始動
View:Masaharu.N
柄塚ゆめの遺影を見て、俺は愕然とした。
あの日、屋上で己緒に見せられた写真の女と一緒じゃったから。
「己緒…」
小さく呟いた名前は誰にも聞かれとらんかった。
「仁王」
「なんじゃ?参謀」
「さっきの理緒という子供の言葉を覚えいるか?」
「あぁ」
不思議な少年じゃった。
俺らん事は調査済みっちゅうことなんか、ほんに変なヤツじゃ。
それにアイツん言葉に出てきた名前は。
「マリス・ローダ言うたら、パルテノン神話じゃったか?真実の神じゃろ」
「それの加護と言われてもな。何かを知れというこてか…」
「何か起こるんじゃないんかのぅ?」
いや、起こるんじゃなか。
もう、起こっとる。
全ては始まった後じゃ、きっと。
俺らが気付いとらんだけで。
「青学の到着のようだな」
「挨拶するんか?」
「いや…今日はやめておこう」
やめておこうと言いながら、参謀の視線は青学を追っとった。
俺も自然と奴らを目線で追う。
そして、気付いた。
「あの女、笑っちょる」
卑下た笑みで嘲笑う女。
もし、あの女を張っとったら、己緒に会えるんか?
柄塚ゆめの死に何か裏がある。
そう、確信した。
「俺は俺で動かしてもらうぜよ」
先に歩き出した仲間の背中を一瞥して、殺気を悟られんように笑む女を睨みつけた。
アイツに、己緒に会えるんじゃったら、何でも利用しちゃる。
俺はそういう男じゃ。
知っとるじゃろ?なぁ?