18 彼女にボクが思うこと

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アイツが死んだと知ったのは昨日のことだ。
学校の屋上からアイツが飛び降りてから、部活からアイツの存在は消されて、これ以上ない焦燥感。
存在を消されただけなら納得も出来た。
青学において、テニス部の存在は大きい。
それが影響したんだと、納得するしかない。
だが、アイツのクラスメイト達はアイツが飛び降りたということさえ知らされていないようだった。
あの日から、全てが狂い始めていた。


『ーーーくんね?ーくんって素敵な名前だよね』
━━あれはテニス部に入って自己紹介した時。


『ーくん、お疲れ様!』
━━休憩中に持ってくると、いつだって笑顔でドリンクとタオルを渡してきてた。


『……ーくん、ありがとう』
━━これは…俺が見たアイツの最期の表情。ボロボロになって、それでもアイツは泣き笑いを浮かべたんだ。


目眩がする。
頭が痛い。
アイツの顔が走馬灯のように浮かんで消えた。


「大丈夫か?」


部長に肩を叩かれてボーッとしていたことに気付いた。


「大丈夫…です」


前を見据えれば、沢山の花に囲まれて、アイツが見たこともないような幸せそうな顔で笑っていた。
一瞬、アイツがそこにいるような気がして目を擦って見直せば、それは遺影で、もうアイツが生きていないんだと、初めて実感した。


「…泣くな、特にアイツらの前ではな」


部長がわざわざ俺を隠すように立ってそう言った。
アイツは、いつこんな笑顔で笑ったんだろうか。


「部長」

「なんだ?」

「幸せって……いや、何でもないッス」


訊けなかった。
アイツが、柄塚ゆめが幸せだったかなんて。
部長にも答えられるわけないんだ。
アイツに会いたい。
もう一度、頑張れと言ってくれ、ゆめ。
それで俺は頑張るから。





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