17 瞬時に消える笑み


「義姉さん、立海が御到着ですよ」


柄塚家の手伝いである佐久間に連れられ廊下を進んだ先にあった襖を開け、理緒は実に楽しそうに微笑んだ。


「ここから見てたわ。理緒、ヒントを出しすぎよ?あれじゃ、詐欺師は気付いてしまうわ」


そんな理緒の笑顔に己緒も微笑み指摘すると、彼女の前に置かれた何台ものモニターの内の一つを指差した。


「それにしても、青学は遅いね」

「彼らが早く来るような誠意ある人間ならばこんな事にはならなかったでしょう?」


焦れったく感じるのか、楽しみがないのか、理緒は己緒の隣に座るとつまらなさそうにそう言い、己緒は悠然と微笑んだ。


「そりゃそうだ」


己緒の言葉に理緒はケラケラと笑う。
先程、立海のレギュラーメンバーに挨拶していた礼儀正しい少年の姿はなく、どちらかといえば年相応な姿がそこにあった。


「己緒、来たぜ」


柱に寄りかかるように立ち、彼女らを眺めていた景吾が口を開く。
モニターの一つに黒の学ランに身を包んだ青学のレギュラーメンバーが映し出されていた。
その真ん中、守られるように立つツインテールの少女。
少女を視界に入れた瞬間、理緒の顔から笑みが消え、冷たい視線がモニターに向けられていた。





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