15 違和感ある状況
「ここだな」
柳の言葉に顔を上げれば、立派なお寺が立海レギュラー陣の前にあった。
「でっけぇ」
「金持ちなんスか?その、柄塚って人」
「さぁな。精市の頼みで来ただけだから、俺にはわからん」
真田や柳ならわからないが、一介の中学生が喪服など持っている筈もなく、全員が制服を着ていた。
いつもと違うのは普段は着崩されている仁王と丸井、切原の制服がきちんと着られていることだけだろう。
「テニス部のマネージャーだったんスよね?」
立海という他校の人間が珍しいのか、すれ違う人間は彼らをちらりと一瞥していく。
そんな中、切原が口にしたのは彼らが抱いた疑問だった。
彼らの知っている青学のレギュラーが一人もいないのだ。
中には泣きじゃくっている少年少女を見かけたので、彼女は慕われていたようであるが、自分達の知る人間は一人として見かけない。
すれ違った中に試合会場などで見たのだろうテニス部員が何人かいたが、レギュラーの誰ともすれ違うことはなかった。
「レギュラーの一人も会わないというのは気になりますね」
「忙しいにしても、手塚だったら来るだろぃ?」
「そうだよな」
周りを見渡しながら、立海レギュラー陣は首を傾げた。
礼儀を知っている手塚かならば、いくら部活優先を徹底していたとしても、通夜にくらいは出るだろうという彼らの考えは間違ってはいないだろう。
「あの、立海の方々ですよね?」
立海のメンバーに声をかけたのは、幼さを残す喪服姿の少年だった。