7 思い出の中の少女
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授業に出る気も起きん。
参謀から聞き出した情報を整理すべく、俺は屋上の扉を開けた。
『ハル、またサボり?』
聞こえるはずのない幻聴を聞いた。
きっと、柄塚ゆめの名前を聞いた所為じゃ。
「己緒」
懐かしい名前は風に攫われ、二度と掴めない。
いつになく感傷的な自分に苦笑が浮かぶ。
「柄塚ゆめか」
参謀の口からその名前を聞くまで完璧に忘れとった。
『何見とるん?』
『写真』
『好きなヤツとか?って女の子じゃの』
『可愛い子でしょ?』
『俺は己緒のが好きじゃがのぅ』
『ハルったら』
『で、誰なんじゃ?』
『ゆめっていうの。柄塚ゆめ。私の大切な子』
己緒が大切だと言うた子。
同一人物とは限らんが、世の中狭いもんじゃ。
同じヤツと思とった方がよか。
となると、幸村は何が知りたかったんじゃ?
「まさか」
己緒が幸村と接触しとる?
不意に浮上する仮説。
もし、仮説が正しければ、俺は…。
「己緒、もう戻ってはきてくれんのか?」
彼女の去った立海は1年も経った今でもどこか空虚だと感じた。