6 直球勝負-詐欺師と参謀-
「参謀」
後ろから声をかけられ、参謀こと柳は驚いた様子もなく振り返る。
そこには壁に背を預けた仁王が立っていた。
「なんだ?」
「参謀相手に駆け引きする気はなか。直球で訊かせてもらうぜよ。最近、熱心に青学を調べとるようじゃが、何かあんのか?」
仁王の問いかけに対し、常人ではわからぬ程微かに柳の無表情が崩れる。
それに仁王はしめたと頬を緩めた。
「あたり。みたいじゃの」
「精市に頼まれたから調べたまでだ」
「そこまで警戒する相手じゃない。違うたんか?」
怪訝げな仁王だったが、いくら柳でも幸村の考えなど読めるはずもない。
王者といえ、中学生である。
「調べたのは青学というより、マネージャーの方だ」
「マネージャーじゃと?」
仁王の眉間に僅かだが、皺が寄る。
選手ならまだしも、まさかマネージャーについて調べているとは思ってもいなかったからだ。
「柄塚ゆめという青学のマネージャーをしている少女とテニス部の関係について調べてほしいと精市に頼まれた」
「ほぉ、柄塚ゆめのぉ」
「知っているのか?」
「いや?」
仁王の口元には笑みが浮かんでいた。
その表情に柳は何も言わず気になることとして、心に書き留めた。