1 部長代理の任命
「跡部と阿佐ヶ谷は知人の葬儀に参列するので、休みだ。忍足、代理部長はお前に任せる。行ってよし」
榊がいつものポーズでそう言ったのは己緒が帰国してから数日後のことだった。
榊は何事もなかったかのように正レギュラーの集まっていた部室を去っていく。
「なんか」
「雨じゃねぇけど」
「こないだと同じ感じやな」
それは宍戸、向日、忍足によって伝言ゲームのように繋がれたそれは今の状況を分かり易く表現されていた。
残されたレギュラーは各々顔を見合わせた。
「あの2人が休みってマジ?」
「監督が言うんやし、ホンマやろ。葬儀っちゅうことは最悪明日も来んのちゃう?」
「理緒がいないと寂C」
数日前に聞いた覚えのある芥川の台詞にレギュラーは行動を止めた。
「なんか釈然としねぇな」
「何がですか?宍戸さん」
「跡部と理緒の共通の知人の葬儀やろ?こないだ跡部らが遅れてきた時ん話となんや関係ありそうやな」
ニヤリと笑った忍足になんとはともなく全員が頷いていた。
というのも、全員が全員仲間外れは嫌いな上、負けず嫌いなのだ。
いくら、いつかは話してもらえるだろうと、納得していても、変な所で彼らは構いたがりで構われたがりだ。
「と言っても、跡部と理緒が学校に来ないことにはなんともね」
「滝の言う通りだな」
滝と宍戸の言葉により、一時話題が終結に向かった。
彼らはまだ知らない。
今、何が起こっており、これから、何が始まるのかを。