7 再逢
「ただいま、理緒」
「………っ」
「辛かったでしょう?」
振り返って微笑った己緒に、理緒が抱きつく。
一瞬勢いによろめいた己緒だったが、しっかり受け止めて、理緒の頭をふわりと撫でつけた。
「己緒」
呼ばれた名前に、己緒が理緒から視線を外し、そちらを見た。
「ただいま、景ちゃん」
「あぁ」
「理緒のこと、ありがとう」
にこやかに笑う己緒からは全く今の状況を感じさせない。
「理緒、先に帰ってろ」
「景吾さん?」
「景ちゃん…」
泣き止んだ理緒にかけられた景吾の言葉に、理緒は不思議そうに景吾を見つめる。
己緒は何かを察したのか、苦笑気味に景吾を見ているだけだ。
「理緒、当分、日本から離れるつもりはないわ。だから、今は跡部家に戻って?」
「己緒さん…」
「そう呼ばれるのは久しぶりね」
苦笑で返した己緒に何か感じたのか、理緒は静かに抱きついていた腕を解き、己緒から離れた。
「わかりました。今日はこれで」
「悪いな、理緒」
「景吾さん、義姉を頼みます」
「あぁ」
ペコリと頭を下げて、理緒は来た廊下を去っていった。