4 義姉


跡部と理緒が部室に顔を出してから数時間が経過していた。
あのまま、今にも泣いてしまいそうな理緒を見ていられず、芥川は理緒を抱きしめたまま離れなくなっていた。


「跡部」


切り出したのは、はっきりしない事が嫌いな宍戸だった。
何処とはなしに彷徨わせていたメンバーの視線が、跡部に集まる。
跡部はその視線を感じつつ、一つ溜息を落とした。


「俺からは何も言うつもりはねぇ」


一刀両断されたが、彼らは気を悪くした様子はなかった。
何だかんだと跡部は結果的に自分達を蔑ろにする人間ではないと知っているからだ。
それでいて、何も言うつもりがないと言うことは、今は自分達が係わって良い時ではないという事だと、その一言で、全員が理解していた。
彼らの過ごしてきた3年と言う年月は間違いなく、彼らを繋いでいた。


「理緒、アイツから連絡はあったか?」

「こちらからは連絡したんですが、今朝から義姉さんに繋がらなくて…」


問いかけた跡部に、理緒は眉間に皺を寄せ、難しい顔をして答えた。


「理緒ちゃん、姉ちゃん居ったんか?」

「まぁ…」

「マジマジ?」


理緒の姉の存在に、同じく姉を持つ忍足と向日が反応を示した。
騒いではいないが、芥川の意識は先程までより確実に、覚醒に近付いているようだ。


「血は繋がってないんですけど…」


言い淀んだ理緒に不味い話題だったかと、2人が表情を買えるより早く、理緒は少し笑みを浮かべる。


「自慢の義姉です」


血の繋がりがないと言い切った割には、理緒の表情は朗らかで、信頼感を漂わせていた。





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