2 再会
少女がタクシーを降りたのは都内にある大学病院の前だった。
ツカツカとヒールを鳴らし病院の廊下を歩く少女は無表情のままだ。
その無表情が少女の端正な顔を更に際立たせている。
「小父様、小母様」
項垂れるように椅子に座る老夫婦に少女が声をかける。
顔を上げた老夫婦の表情は見る見るうちに変わり、驚いたそれに変化した。
「己緒ちゃんっ」
少女の祖父母と言ってもよさそうな老夫婦は少女を己緒と呼んだ。
その声を聞いた己緒は今まで変わる事のなかった表情を悲しげなそれに変えた。
「あの子、ゆめは…」
己緒が口にした名前を聞き、老夫婦はガラス窓の向こうにある無菌室を一瞥した。
その視線に己緒はガラス窓に駆け寄った。
久しぶりに見た愛しい彼女は痩せ細り、沢山の管に繋がれていた。