息を切らして、俺を睨む風来坊と毛利の旦那。

その視線で、2人が気付いたということを知る。



「みつきちゃんを殺したのは、片倉さんじゃない」

「じゃぁ、誰がっ!?」



声を荒げる鬼の旦那に、笑いがこみ上げる。

スッと、向けられる銃口に、その笑みを消した。



「なんの、冗談?毛利の旦那」



銃口の先、銃を握る毛利の旦那に問いかける。

それでも、銃口を俺から外さない毛利の旦那は、見たこともない険しい顔をしている。



「佐助、もうやめようよ…?」



風来坊が、哀しそうに声を出す。

やめる。って、何を?



「慶次、何してんだ?猿飛は、みつきの、」



恋人?

弟分?

鬼の旦那が続けようとした言葉は、途切れる。

風来坊が翳したボイスレコーダーによって。



『また、この日が来たね。私は、いつ、殺されるんだろう。あの人が笑う度に、泣きたくなる。いつまで、馬鹿げた芝居を続けるつもりなの?私の思い過ごしだったらどんなに良かったか。ねぇ、佐助、仇討ってそんなに我慢出来るものなの?』



ボイスレコーダーから流れてきたんは、彼女の、みつきちゃんの声だった。



「みつきの遺言だ。パソコンに音声で残っていた。他にも、いっぱいな」

「佐助が復讐の為にみつきちゃんに近付いたの、全部、残ってたよ」



抜かりないなぁ、みつきちゃんも。



「よく見つけたもんだよね」



遺品整理って名目で、散々証拠が残ってないか探したのにさ。

唯一、ロックがかかってた所為で、見れなかったパソコンに残っていただなんて、詰めが甘いな、俺様も。



「パスワード、解けたんだ」



俺が解けなかったパスワードを、風来坊達が解けた事が、妙に癪に障った。



「パスワードな。猿飛、そなたの名前だった」



嘘だ。

そんなの、みつきちゃんがつける筈ナイ。

気付いていたのなら、尚更。

俺の、名前を、パスワードにするだなんて。



「猿飛、本来ならばそなたを一思いに殺したい。だが、あんなものを聞いたら我には…」



毛利の旦那が向けてた銃口が俺から、外される。

一歩後ろで、風来坊がボイスレコーダーの再生ボタンを押した。



『今日は、七回忌。きっと、今日、私は死ぬ。もし、誰かがこれを見つけた時の為にメッセージを残します。

佐助。
貴方がこれを見つけた時は、迷わず、消してください。佐助にとって、邪魔になるから。でもね、偽りだったとしても、私は楽しかった。佐助と一緒に居て、楽しかったよ。

元親。
貴方が見つけることは、まずナイと思う。これは遺言です。私の仇をとろうなんて思わないで。死は、死を、呼ぶだけなのだから。貴方が居てくれて良かった。私の代わりに泣いてくれたことを感謝しています。

小十郎さん。
今まで、迷惑ばかりかけてごめんなさい。それから、ありがとう。
大好きでした。

幸村。
早く、出世して、政宗達を助けてね。武田のおじさんももう年なんだから、頼り過ぎないこと。

元就。
本当は優しい元就。貴方には、この仕事、向いてないわ。早く辞めて堅気になりなさい。貴方なら、起業したってやっていけるわ。

慶次。
ゴメンね。慶次の笑顔が大好きです。私が、泣かしてしまうのだろうけれど、どうか笑っていて。あの子の為にも、あいつらの為にも。

政宗。
ずっと前に、妹の話をしたのを覚えてる?次の春に、私を頼って、妹が上京してくる予定なの。よかったら、政宗が面倒を見てやって?名前は、ひらがなで、いつき。私と同じ銀髪だし、小さな頃の私に似てるから、すぐにわかるわ。

最後は、皆に。
きっと、全部聞いたと思うけど、佐助は何も悪くないよ。ただ、死が、死を、呼んだだけ。私が、佐助の家族を殺したから、佐助が私を殺すだけ。だからね、出来ることなら、私の事なんて忘れてください』



誰も、何も、言えなかった。

俺は、泣いていた。

みつきちゃんの、優しさが痛くて、みつきちゃんを殺すことしか考えてなかった自分に、涙を流した。




流れた涙に、好きだったのだと、気付かされた。





呪われた指輪は廻る
ファンタジー「クラシック」(c)ARIA
write by 99/2010/01/05
⇒To be continued.




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