「元就」
仕事のパートナーである前田の声が聞こえた。
我の後ろに立つ前田は、真っ黒な喪服。
一方、我はといえば、いつもと変わりない仕事用のグレーのスーツ。
こやつはみつきの葬式に出てきたのだろう。
我はどうしても出席する気になれなんだ。
認めたくなかった。
みつきがこんなにも早く死んでしまうなどとは。
こんな仕事している以上、いつかは恨みをかって殺されてしまうかもしれない。
だが、それでも我は、みつきが殺されてしまったなど、認めたくはなかったのだ。
みつきの死を聞かされた時、我は気付けば涙を流してた。
理解よりも、先に身体は反応して、涙が溢れたのだ。
その時、一緒に居た前田は、我より泣きそうな顔しながら、一滴の涙も流さずに、ただただ気丈に振る舞った。
我の涙に気付き、
『泣くなんて駄目だ、元就』
と、笑ったのだ。
前田の呼びかけに振り返らなかった我に注意する事もなく、
「綺麗な死に顔だったよ、みつきちゃん」
と、それだけを言って、前田は去ろうとした。
そんなこやつに我は内心感謝した。
何故なら、また、頬に涙が伝っていたから…。
みつき…。
我には、
まだみつきが必要だ…。
星、きらきらファンタジー「クラシック」(c)ARIAwrite by 99/2010/01/05
⇒To be continued.