みつきと、書かれた表札に線が引かれ、その下にその文字よりも小さく元親と書かれ、さらにその字を避けるように佐助と、俺様の名前が書かれた表札。
それは、何よりも、みつきちゃんがそこに存在したという証だった。
「早くしなよ、鬼の旦那」
今日も、食卓には、2人分の食事が並ぶ。
それは、鬼の旦那にとってみつきちゃんがいた頃から変わらない数だ。
作る人間がみつきちゃんから俺様に変わっただけ。
「まだ、12時じゃねぇか」
ふぁっと、欠伸をし、食卓についた鬼の旦那に、俺様は苦笑を禁じえなかった。
「ねぇ」
「んぁ?」
早速、トーストに齧りついた鬼の旦那に言う。
「すっごい寝癖」
「嘘だろっ!?」
立ち上がり、バタバタと洗面所に駆けた鬼の旦那の叫びが、家に響き、隣から右目の旦那が怒鳴り込んでくる。
賑やかな、朝。
みつきちゃんが望んだ形ではないが、変わらぬ毎日を送っていた。
ピンポーン
ドアチャイムが鳴り、来客を知らせる。
「はいはぁ〜い」
間延びした声で答えながら、玄関のドアを開ける。
そこには、引越しの挨拶だろう品を抱えたみつきちゃんの面影を宿す少女がいた。
「引っ越してきたいつきだ…です。よろしくお願いします」
好印象を与える笑顔に、俺様も右目の旦那も、その後ろから覗き込んできていた鬼の旦那も、口端が上がるのを感じていた。
「こっちこそ、宜しく」
君がいない虚無感が埋まることはナイけれど、もう寂しいとは思わない。
新世界へとファンタジー「クラシック」(c)ARIAwrite by 99/2010/01/05
⇒The end.