教育実習生というのは、ただただ経験的に教壇に立ってみたり生徒達との交流を深めていればいればいいという訳でもなく、当然のものとしてレポートのような報告書のようなものを書かなくてはいけない。

レポートなんて死ねばいい!なんて思っていても、それがなくなるわけもなく、私は目の前のパソコンに恨めしげな目線をやるだけに留めた。

気持ちとしては、自前のこのノートパソコンを破壊してしまいたい。

ただし、それを実行に移して困るのは私自身であると重々に理解しているので、するわけがない。

パソコンって高いんだぜ!



「何してんの?センセ」

「大学に提出する実習報告の下書き」

「めんどくさそう」



ふにゃんと頬を緩めるチカは普段の目つきの悪さが軽減されてどちらかというと可愛いという表現が似合うだろう。

そう、これがレポートを前にした私ではなくて、更に言うなら、チカの手に私が社会科準備室に持ち込んだプレ2のコントローラーが握られていなければ、ただあぁ年相応に可愛いところもあるじゃないかと言えた。

だがしかし、私はレポートと格闘中であるし、現在進行形でチカの手にはコントローラーが握られ、家庭用には向かないくらいに小さなテレビの画面の中ではチカが操作するキャラクターがステージボスに対峙したところである。

私もやりたいなぁなんて願望を押さえ込み、ぼんやりとその画面を見ながら、チカの色素の薄い後ろ頭を眺める。

旋毛発見。

ホント、どうでもいいことばかり思い出す。

ココに居れるのも少しの間。

大学に戻れば、またレポートに終われ、半分ほど書いて行き詰っている卒論を仕上げなければならない。



「小野先生がチカが授業に来ないって嘆いてたよ」

「小野って、数学だろ?なんで社担のセンセに嘆いてんだよ」

「小野先生、私がココを卒業した時の担任だったからさぁ」

「それはご愁傷様。っよし!筆頭倒した!」

「何で一回目で倒せるわけ?私、チカちゃん3回も死なせたんだけど」

「それはセンセと俺の腕の違いっしょ?」



ニィと口端を上げたチカの額目掛けて、手慰みで作ったルーズリーフの紙飛行機を飛ばした。

残念ながら、それがチカの額に当たることはなかった。



「センセ、勉強教えて」

「日本史ならね」

「数学に決まってんじゃん」



ガタガタと私の目の前のパイプ椅子に座って、チカは項垂れるように机に身体を預ける。

集中力もあったもんじゃないと、ノートパソコンの電源を落とした。

変わりに机に広げるのは、小野先生に聞いて作った自作の数学プリント。



「とりあえず、解いて。わかんない所はほっといていいから、終わったらわかんない所やっていこう」

「サンキュ、センセ」



自分の鞄からペンケースを出してプリントに向かうチカを見て、私はもう一つ紙飛行機の製作に取り掛かった。





教育実習生と一生徒の日常的風景
(「センセ」「なに?」「全部わかんねぇ」)
write by 99/2011/10/02





まずはリクエストしてくださいました、きちがい酒サマ、ありがとうございます。
前世の影竜主とチカのちょっとした日常で仄々とのことでしたが、だいたいはリクエストに沿えているかなぁと思います。
厳密に言うなら沿えてないのでしょうが(ォィ)
書き始めると早かった作品です。
書き出すまでが長かった。
本当にどうでもいい話なのですが、数学担当の小野先生のモデルは私の高三の担任です。
残念ながら、数学担当ではなかったのですが。
あと、BSR2の元親で筆頭に3回も負けたのは私です。
いいとこまで行くのになかなか勝てなかった。
チカは大体のことはこなすのに数学だけは破滅的に理解力がない設定。
化学も生物も大丈夫なのに、なんで数学ダメなの!?って影竜主は悩まされてます。
私は教育実習に出たこともないので、教育実習の報告レポートなんて捏造もいいところです。
いや、多分あるんじゃないかなぁと思って書きましたが実際に教育実習に行かれた方がないよっと思われても心の奥底にしまっていてくださいませ。
レポートの有無なんぞ、正直言って本編になんの意味もないので、どうでもいいんです(苦笑)


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