古株の家臣連中とオレ達の抱えていた確執が解決の向かい、順風満帆と言って良かった。

やっと、誰の前でも、兄上としてあの人を外に出してやれると、そう思っていた矢先だった。



「それにしても、奥谷は相も変わらず気持ちの悪い奴だ」

「ニコリともせん」



気持ちが悪い?

誰が?

ニコリともしない?

誰が?

奥谷…それは誰だ?

奥谷、藤九郎。

兄上の、空宗のもう一つの名。

それを理解した時には、オレは文机を蹴飛ばして、それを口にした奴らを殴っていた。



「主殿、お静まれくださいませ」



静かな声音が響く。

その声の主はオレと同じcolorの目でしっかりとオレを見据えていた。

瞬時に、沸騰していた頭の中がcool downしていく。

それを感じてか、小十郎と綱元が後を引き受け、オレは藤九郎と共に離れへと移動する。

その間にも、兄上の事をよく知りもしない奴らの声が頭に蘇って、苛々した。



「ある、いや、政宗。少しは気が静まりましたか?」



スルリとオレの額に手を当てる藤九郎は兄上のfaceで苦笑していた。



「私のことで怒ってくださるのは実に嬉しいことです。けれど、それで、政宗の立場が悪くなるのは本意ではありません。ですからね、政宗は少し客観的に物事を見る訓練が必要ですね」

「客観的に見る訓練」

「はい。私や景綱や綱元、それに成実。政宗にとって近しい人間のことを何と言われようとイラついたりムカついたりする本心を相手に悟られないようにすることです。相手がいなくなってからなら、いくらでも怒っていいですからね」



兄上の言っていることはよくわかる。

オレは一城の主で、奥州筆頭であるのだから、近しい人間とはいえたった一人の為に国を危険に晒すような真似はするなってことだ。



「Okey」

「でもね、政宗」



フフッと笑った兄上は、奥谷藤九郎が決してしない優しい顔をしていた。



「嬉しかったですよ。私の為に君が怒ってくれた事」





喜怒哀楽は君のため
(「政宗?顔が真っ赤ですけど、熱でも?」)
write by 99/2011/10/02




まずはリクエストしてくださいました、璃桜サマ、ありがとうございました。
影竜主で夢主が害された時の政宗の怒りということでしたが、あれ?これ、添えてる?
一番書くのに時間がかかってました。
というのも、影竜主って害される前に先手打っちゃうか、綱元さんがなんとかしてそうと思ってしまった所為です。
あとは、最初害されるのが言葉でなく、立て篭もりの人質という形だったので、大幅に書き直したり。
だって、立て篭もりは綱元さんが出張って、政宗の話にならなかったんだもの。
とりあえず、政宗が兄上大好きなのがわかっていただければいいかなぁと思ってます。


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