紅は好きだった。

燃え滾る紅は、己の焔の色であり、武田の色だったから。

父が背負い、今は自身が背負うその色を嫌いになることなどありはしない。

御館様が居られる限りそうであると思っていた。

けれども、今だけは嫌いになりそうだ。


「ずっとついてくると言ったではないか」


忍ぶには向かぬ白い忍装束が紅に染まっていた。


「一緒に居るのではなかったのかっ音子っっ!」


声は掠れていた。

これでは届かぬではないか。

某と共にあると誓った音子に。



違えるつもりか?
「従わせる者」(c)こなゆき
write by 99
2010/12/01〜2011/10/03


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