銀の鮫と紅の王座

ウ゛ァリアーの屋敷は何と言うか、不思議な程に静かな場所だった。
学生寮に近い程に人が住んでいる筈であるにも関わらず、人の気配がしない。
暗殺集団というのはこういうものなのかと妙な納得をしてしまった。
私はといえば、幻術師としての能力を見抜かれたというわけでもなく、ただザンザスに気に入られ拾われてきたというのが現状のようである。
占いとは名ばかりな私の願望を詰め込んだ占い結果の何処に彼が気に入る内容があったのか、疑問ではあるけれども、元よりウ゛ァリアーに所属するつもりであったのだから、結果オーライだ。
とはいえ、私は本当にザンザスに拾われてきた犬猫のようなもので、正規のウ゛ァリアー隊員ではないので、部屋がない。
幻術をかけたままだったので、ザンザスは私を男、しかも10代前半の少年だと思っているようで、ウ゛ァリアー邸に居着いて三週間程経ったが、いまだにザンザスの私室での生活を余儀なくしている。


「ザンザス、話があるんだけれど」

「なんだ?」


話し掛けようものなら手当たり次第に物が投げられ投げる物が無くなれば手に憤怒の炎なイメージを持っていたのだけれど、意外なことに、普通に会話をしてくれる。
いや、普通なんだ。
それが人間として正しいのだとはわかっている。
でも、ザンザスというものをキャラクターとしてイメージした時、天上天下唯我独尊という八文字がピッタリだったと記憶していた私には意外以外の何物でもなかった。


「僕のことを少し話しておこうと思う」

「あぁ」


読んでいた本に几帳面にもブックマーカーを挟み、ザンザスは片膝を立て座っているキングサイズのベッドの傍らにあるローテーブルに置き、私を見遣った。
かく言う私はザンザスの座っているベッドに腰掛けている状態だ。


「その前に幻術を解くよ」

「は?」


ザンザスにしては珍しく間抜けな声が上がった瞬間に、スゥッと少年体をしていた私は赤ん坊の姿に戻った。
久しぶり、三週間振りのアルコバレーノな私。


「赤ん坊…」

「ザンザス程の人間なら知っているだろう?アルコバレーノの存在を。僕はアルコバレーノの一人で藍色のおしゃぶりを持っている」


それから、沢山の話を一方的にした。
ボンゴレにはあまり知られたくないこと、普段から幻術で姿を変えていること、今は一人だということ、自分が本当は女でバイパーという名だということ。
最後の女だということを話した時のザンザスは本当に気まずそうだったので、こちらが悪い気がした。
むしろ、私自身女であっても赤ん坊なのでどうしようもないと思うんだけどね。
まぁ精神年齢的に言うのであれば、年増どころか老人の域な気がしてならないのだけれど。


「そうか」


全てを聞いてザンザスは考えるように瞼を伏せた。
この仕種がしっかりと頭の中で物事を整理している時の仕種だとこの三週間でわかっている。
彼はとても頭が良い。


「マーモン」

「なんだい?」

「お前がアルコバレーノだろうが、俺はお前を手放す気はねぇ」


強欲という言葉が似合うのは、イメージ通りだね。
ザンザスの言葉にやっとマーモンとしての居場所を手に入れたような気がした。
その日も結局ザンザスの私室で就寝した。
今更なので、部屋はなくてもいいよと言ったら、軽く殴られたけど。
だって、研究室くれるっていうから、一応遠慮しただけなのに。


「う゛ぉぉぉぉぉい゛っ」


ザンザスに色々と告白して更に一週間程経ったある日、片腕のない銀髪の少年がザンザスをウ゛ァリアーのボスという王座に押し上げた。
その日中に対面した私は本能で生きるこの鮫に一種の畏怖を抱くことになった。


「てめぇ、女かぁ?」


その時の私はいつもの少年体で、スクアーロに壁際に追いやられ剣を突き付けられていた。
野生の感って凄い!なんて感動してる場合じゃなかったけれど、仕方ないと思う。
まぁザンザスによって、私に突き付けられていた剣が弾かれた上にスクアーロが蹴飛ばされたのは私の所為ではないと思いたい。
ザンザスが少しどころか、物凄く私に甘い気がするのは気の所為にしておきたいのだ。


「はじめまして、S・スクアーロ。僕はマーモン。詳しい話はボスの部屋でにしてくれるかい?」


有無を言わせず連行。
とりあえずは、揺りかご回避の為に色々とネタばらしさせてもらおうじゃないか。
私は良い奴じゃないから、原作なんて総無視だよ。
だって、私の光を奪う世界なんて要らないもの。
もう私の光だった母は居ないんだから、私という異質を受け入れてくれた光候補のザンザスを無くさない為に助力しましょう。






さぁ 役者 は揃ったよ








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