二
仁王が文月の着ていたカーディガンを文月にかけようとした時だった。
持ち上げたカーディガンからガサリと紙の音がした。
「何の音だよぃ?」
文月にはかけずに、仁王がカーディガンを観察する。
「これかの?」
仁王がカーディガンのポケットから、握り締められたようにぐしゃぐしゃになった紙を取り出す。
紙質自体は新聞のようだった。
「新聞か?」
「多分」
ぐしゃぐしゃになってた所為で脆くなってるのか、仁王は慎重にそれを開いた。
俺は仁王の手を覗き込んで、開かれるのを待つ。
俺達の後ろでは、文月が静かな寝息を立てている。
「…………………」
「…………………」
開かれた瞬間、俺達は言葉を失った。
文月の懺悔の意味を理解した。
でも、俺には文月が謝るようなことをしたようには思えなかった。
「さっきの、これじゃったんじゃな」
仁王の落ち着いた声が静かな部屋に響いた。
「ブンちゃん」
「何だよ」
「俺らは何も見んかった。文月が何を抱えとるんか知らん。それでえぇ?」
すこし目を見開いた。
仁王は紙の皺を伸ばして、綺麗に折って、自分のジーンズのポケットに入れた。
「そうだな。文月が話してくれるまでは」
聞かない。
俺達はそう決めた。
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