仁王が文月の着ていたカーディガンを文月にかけようとした時だった。

持ち上げたカーディガンからガサリと紙の音がした。


「何の音だよぃ?」


文月にはかけずに、仁王がカーディガンを観察する。


「これかの?」


仁王がカーディガンのポケットから、握り締められたようにぐしゃぐしゃになった紙を取り出す。

紙質自体は新聞のようだった。


「新聞か?」

「多分」


ぐしゃぐしゃになってた所為で脆くなってるのか、仁王は慎重にそれを開いた。

俺は仁王の手を覗き込んで、開かれるのを待つ。

俺達の後ろでは、文月が静かな寝息を立てている。


「…………………」

「…………………」


開かれた瞬間、俺達は言葉を失った。

文月の懺悔の意味を理解した。

でも、俺には文月が謝るようなことをしたようには思えなかった。


「さっきの、これじゃったんじゃな」


仁王の落ち着いた声が静かな部屋に響いた。


「ブンちゃん」

「何だよ」

「俺らは何も見んかった。文月が何を抱えとるんか知らん。それでえぇ?」


すこし目を見開いた。

仁王は紙の皺を伸ばして、綺麗に折って、自分のジーンズのポケットに入れた。


「そうだな。文月が話してくれるまでは」


聞かない。

俺達はそう決めた。



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