二
暖かなカフェオレが美味しそうな匂いをさせている。
「で。お前さん、名前は?」
「丸井文月です」
まーくんとブンちゃんにそっくりな彼らは立海の中学生らしい。
蓮ちゃん先生と赤也先生の学校と同じ制服を着ているから。
「お前、なんで仁王ん家の前に居たんだよぃ?」
「ブンちゃん待ちんしゃい。先に自己紹介したらんと、困惑しとるぜよ」
「あ、わりぃ」
見れば見るほど、彼らは私の知っているまーくんとブンちゃんに似ている。
「俺は丸井ブン太。シクヨロ」
「仁王雅治じゃ」
聞こえた名前は彼らのもの。
大好きで大好きでたまらない人達の名前。
「どうして…?ブンちゃんとまーくんなの?」
私の言葉に彼らが固まった。
丸井なんてよくある名字だものね。
でも、私は間違いなく丸井ブン太の娘なんだもの。
「どういうことじゃ?」
「私の父は丸井ブン太です」
「は?」
「あの、今日は何年の何月何日ですか?」
確かめなくちゃいけない。
もしかしたら、私はまーくんを助けられるかもしれないから。
「200×年7月18日じゃき」
若きまーくんの口から答えられたのは10年も前の日付。
私はタイムスリップしてしまったの?
「文月?」
ただ名前を呼ばれただけなのに泣きたくなった。
そこにあったのは当たり前だった、私の幸せ。
Next⇒『壊れた世界で眠った迷子』