オトナとコドモの境界線




「失礼ですが、このお嬢さんは?」


それを言うたんは、依頼者の女。
自宅兼仕事場にしとるマンションで、次に建てる店の設計図を見に来た女は文月を見てそう言うた。
ただでさえ人見知りが激しい文月はビクリと肩を揺らして、紅茶を出したらすぐに自室に引き上げた。


「友人の娘を預かっているんですよ」

「そうでしたの。大変でしょう?子供って」


その目が文月を嘲笑っとった。
スッと女の目の前にあった設計図を自分に引き寄せて、その少し厚めの紙を真っ二つに破る。


「文月を馬鹿にするんはやめてくれんか?」

「仁王さん…?」

「気分が悪か。これからお前さんとは一切仕事せん。この仕事も他あたりんしゃい」


ピシャリと言い放つ。
呆然としとった女の顔が、徐々に赤くなる。
それは照れやなくて、怒りと恥ずかしさから。
この表情は学生時代によぉ見てきた。
テニス部のファンてヤツは勘違い女が多かったけぇ、指摘したらこんな表情をよぉ浮かべて最後には泣きよった。


「こっちから願い下げよ!ロリコンっごめんあそばせ!!」


バタバタと荷物を纏めて女が出て行く。


「ロリコンのぅ…」


それぐらいじゃ痛くは感じん。
ただ、文月の将来性を考えたら、切なぁなる。


「雅治…?」


女が出て行く時の騒がしさからか、そっと自室の扉を開けた文月が俺の様子を窺っとった。
そんな文月に手招きをして呼び寄せる。
ソファに座ったまんまの俺んトコに寄ってきた文月をそっと抱き寄せる。


「愛しとぅよ」

「どうしたの?」

「なんでもなか…」


文月はそこらの大人よりよっぼど大人じゃ。
大人と子供なんて誰がわけるんじゃろ…。
大人なんて醜いだけじゃ。
じゃけど、子供はただただ残酷。
なら、俺は…。


「大人にも子供にも分類されたぁないの」

「……?」


呟きは文月に聞こえてんかったようで、なんとなく安心した。



オトナとコドモの境界線
(そんなもん失くなってまえ)
(c)xxx-titles





仁王さんは仕事モードだと標準語という設定。
壁の代わりです。
大人と子供の境界線なんて誰が決めるんでしょうね?
子供でも下手な大人より賢い子はいるし、大人でも子供みたいに無垢な人もいる。
難しい問題ですね。
つか、今時、ごめんあそばせって言う人居るんかな…?





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