可愛いひと




寒さの厳しい季節が近付いた11月半ば。
16になって4ヶ月近く経った私は、未だに仁王家でお世話になっている。
というのも、一時帰国したブンちゃんと暮らせたのは僅か3ヵ月で、7月の私の誕生日から始まったまーくんと私の関係を知らないブンちゃんは、またまーくんに私を預けて支社のあるニューヨークに行ってしまったからだ。
ブンちゃんを見送ったあの時のまーくんは素晴らしいほどの笑顔だった。


「まーくん、起きた?」


いつもなら起きてくる時間にまーくんが起きてこないので、心配になって寝室に入れば、頭まで布団を被って、そこから覗いていた銀の髪がカーテンの隙間から降り注ぐ光にキラキラと輝いた。


「まーくん…?」


人の気配に敏感なまーくんが起きる様子を見せない。
更に心配になって、まーくんの寝ているベッドにそっと近付いた。


「ーーッえ?」


布団から伸びてきた腕に捕らえられてバランスを崩した。
崩して倒れ込んだ先にはいたはずのまーくんは居なくて、私はふかふかのベッドに衝撃を吸収されながら倒れ込んだ。
目の前には私に覆い被さるようにしながらも、体重はかけずに明らかに起きたてではない顔で悪戯っ子のようにニィッと笑うまーくん。


「まーくん…」

「違う」

「まーくんでしょ?」


ちょっとだけ私に倒れ込んで体重を軽くかけて、肩にまーくんは顔を埋めてフルフルと首を振った。
長めの銀髪が頬を擽る。


「雅治て呼ばんと起きん」


そう言われて、苦笑しか浮かばなかった。
時々、10以上も離れた恋人はこうやって私を困らせる。
困らせるというのは違うかもしれない。


「雅治、起きて?」

「ん…」


甘い音で同意を示したまーくんは身体を離して、私の額にキスを落とすとベッドから抜け出して、私に手を差し出した。


「おはようさん、文月」

「おはよう」


貴方が愛しいの。
いつもは甘えさせてくれる貴方が、たまに甘えてくる時が大好きなの。



可愛いひと
(それは甘えてくる貴方)
(c)xxx-titles



いつ癖でまーくんと呼んでしまうヒロインと雅治と呼んでほしい仁王さん。
甘えたな仁王が書きたくなる時がたまにあります。
多分、仁王が大好きなだけです。





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