まーくんに促されて、ベンチへと座る。

手にはまーくんが買ってくれたスポーツ飲料のペットボトルを持って。


「話があるんじゃ」

「話?」

「あぁ」


隣に座ったまーくんは自分用の缶コーヒーを手で弄び、少しの沈黙が降りる。


「ずっと言わんつもりやった。6年前までは」

「6年前…」


6年前という単語で思い浮かぶのは、まーくんを犠牲にしてしまったあの事故だろう。


「文月が目覚めんくて、ほんに怖かった。このまま、文月が目覚めんかったらって毎日思っとった」


私もまーくんがこのまま死んでしまったら、って、いっぱい考えた。


「文月は丸井の娘じゃき。やけど、俺ら全員がお前さんを娘のように思っとう。やから、捨てようと思ったんじゃ」

「え?」


捨てようと思った?

私は要らない存在?


「いらんことは考えなさんな?」


キュッとペットボトルを握った手にまーくんの大きな手が重なった。


「俺も12月になったら、もう35じゃき。文月は今日16になる」

「うん」

「俺は丸井と同じ年じゃし、親子でもおかしいない」

「うん」

「でもな、俺は文月が好きなんじゃよ」

「う………え?」


相槌を打とうとして、聞こえた言葉を頭の中でもう一度繰り返した。


「文月が好きじゃ」

「まーくん…私……」


涙が溢れそうだった。




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