……6年後……


「ブンちゃーんっ早く起きて!遅刻しちゃうよ!!」

「まだ眠ぃ…」

「昨日赤也先生達と騒ぎ過ぎたからでしょ!私もう出るからね」


ブンちゃんを起こして、私はリビングにあった鞄を引ったくるように掴み玄関へ駆けた。

急がないと、待ち合わせに間に合わない。


「いってきまーす」

「いってらー」


やる気のない返事が聞こえ、私は玄関の扉を閉めた。

外は日差しがきつく、まだ8月になっていないというのに暑い。

蝉が鳴く街路樹の下を影伝いに歩き、目的の待ち合わせ場所を目指した。


「あ」


待ち合わせ場所の公園には真っ昼間の公園に到底似合わない銀の髪。


「まーくん!待たせてごめんなさい!!」

「いや、俺も今来たき、気にしなさんな」


ニコと笑うまーくんに私はありがとうと笑い返した。


「今日は暑いの」

「うん。まだ8月じゃないのにね」

「温暖化の影響は偉大なり」


フフッと笑えば、まーくんはん?とこっちを向いた。


「なんでもない」


そう言えば、まーくんはポンポンッと頭を軽く叩くように撫でてくれた。

半袖からスラリと伸びる腕には痛々しい傷痕。

それは私を庇ってひかれた時についたものだ。

私は知っている。

その傷痕が薄くはなっても、消えることがないことを。

そして、まーくんがこの腕の所為で長時間テニスを出来ないことを。



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