七
次の日の部活にも文月は臨時マネとして参加した。
俺達は文月との時間を過ごし、浮かれていた。
「文月?」
仁王が不思議そうに文月の名を呼んだ。
それに振り返れば、怪訝な仁王の顔があった。
「どうした、仁」
「文月っ!」
仁王、と呼ぼうとして、俺は言葉が出なかった。
文月の身体が透けていた。
確かに昨日は触れられたその身体が、透けていた。
「文月…」
「死ぬのかな?未来に帰るのかな?」
「帰るんだよ、お前は!死ぬなんて言うな!!」
俺達の声に気付いて駆け寄ってきた丸井が叫ぶ。
未来に帰るんだ。と、言い聞かせるように。
「ブン太、雅治っ!」
「大丈夫じゃ、お前さんは死んだりせん。未来の俺が救った命じゃ、死んだりしたら許さん」
「文月、忘れんな!俺達はお前の味方だかんな!!」
もうほとんど見えない彼女に丸井と仁王が必死に語りかけていた。
俺達は呆然とその様子を見ているしかできなかった。
ポタッ
一粒の涙がコートに落ちた。
ひとは何故祈り、何故願う。
それは…幸せになりたいからだ。
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