「文月」


文月の頭を撫でて、丸井が文月を宥めるように名前を呼ぶ。


「幸村くんだろぃ?」


丸井が紡いだ名前に全員が弾かれたように顔を上げて、丸井に注目する。

その目は酷く穏やかだった。


「俺達ん中でそういう風に言えんのは幸村くんだけだ。幸村くんは仲間思いだし、な」


苦笑にも似た丸井の笑みに、また文月が涙を流した。


「悪ぃな」


ギュッと文月を丸井が抱き締める。

年の頃を考えれば、恋人に見えなくもない2人なのに、俺達にはちゃんと親子に見えていた。

その後は部活をしながら、文月と少しでも多くの話をした。

少しずつ文月と俺達の距離が近くなっていった。


「文月!お前、誕生日いつだよ?」

「いきなり何言ってんだ、赤也」

「そういや知らねぇと思ったんスよ」


赤也の質問が飛ぶ。


「文月?」

「7月23日…です」

「23?明後日か」

「たしか、部活休みッスよね!」

「折角ですから、文月さんの誕生日パーティーでもいかがです?」


柳生の提案に文月以外が頷き、決定する。



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