六
「文月」
文月の頭を撫でて、丸井が文月を宥めるように名前を呼ぶ。
「幸村くんだろぃ?」
丸井が紡いだ名前に全員が弾かれたように顔を上げて、丸井に注目する。
その目は酷く穏やかだった。
「俺達ん中でそういう風に言えんのは幸村くんだけだ。幸村くんは仲間思いだし、な」
苦笑にも似た丸井の笑みに、また文月が涙を流した。
「悪ぃな」
ギュッと文月を丸井が抱き締める。
年の頃を考えれば、恋人に見えなくもない2人なのに、俺達にはちゃんと親子に見えていた。
その後は部活をしながら、文月と少しでも多くの話をした。
少しずつ文月と俺達の距離が近くなっていった。
「文月!お前、誕生日いつだよ?」
「いきなり何言ってんだ、赤也」
「そういや知らねぇと思ったんスよ」
赤也の質問が飛ぶ。
「文月?」
「7月23日…です」
「23?明後日か」
「たしか、部活休みッスよね!」
「折角ですから、文月さんの誕生日パーティーでもいかがです?」
柳生の提案に文月以外が頷き、決定する。
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